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僕が「黒字倒産」寸前まで追い込まれた本当の理由。売上だけを見て、キャッシュを見ていなかった僕の大きな過ち。

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支払日を3日後に控え、通帳の残高が、息子の小遣いより少ない8万円になったあの夜のことを、今でも鮮明に覚えています。

帳簿の上では、確かに利益は出ていました。
先月も、その前の月も、売上は右肩上がり。
それなのに、なぜ。
なぜ、従業員の給料も、オフィスの家賃も、コピー機のリース代すら払えないのか。

「坂上さん、これじゃあ今月の支払いは無理ですよ」

顧問税理士からの電話で告げられた現実は、まるで悪夢のようでした。
これが、僕が身をもって体験した「黒字倒産」という地獄の入り口です。

もし、あなたが今、過去の僕と同じように「売上は順調なのに、なぜか手元にお金が残らない」と首を傾げているなら、どうかこの記事を読んでください。
これは、どこかの教科書に書いてあるような机上の空論ではありません。
僕が泥水をすすり、プライドをズタズタに引き裂かれながら学んだ、あまりにも痛い失敗談と、その暗闇から這い上がった全記録です。

この記事を読み終える頃、あなたは黒字倒産の本当の恐ろしさと、それを回避するための「たった一つの真実」に気づくはずです。
大丈夫、その痛みは僕が一番よく分かりますから。

なぜ売上はあるのに…?僕が「黒字倒産」の崖っぷちに立った日

順風満帆だったはずの航海

僕はもともと、大手建材メーカーで働く営業マンでした。
しかし、父が営んでいた小さな印刷工場が、取引先のあおりを受けて黒字のまま廃業。
呆然と立ち尽くす父の背中を見て、「どんな嵐が来ても、従業員とその家族を守れる会社を自分の手で作りたい」と強く決意し、32歳で独立しました。

Webデザインとマーケティング支援の会社は、ありがたいことに順調に成長しました。
売上グラフが右肩上がりに伸びていくのを見るのが、何よりの快感でしたね。
「売上さえあれば大丈夫だ」
僕は本気でそう信じ込んでいました。
キャッシュフロー計算書なんて、税理士に任せきりで、まともに見たこともありませんでした。

それが、僕の大きな、本当に大きな過ちだったのです。

突然の嵐。売上という名の「蜃気楼」

悲劇は、一本の電話から始まりました。
売上の半分以上を占めていた主要クライアントからの、突然の契約打ち切り。
理由は、先方の経営不振でした。

もちろん、契約が切れるまでの売上は発生しています。
帳簿上は、数百万円の利益が計上されている。
しかし、その売掛金の入金は、2ヶ月先。

一方で、僕の会社からの支払いは、容赦なく「今月」やってきます。
外注費、サーバー代、広告費、そして従業員の給料…。
出ていくお金(キャッシュアウト)と、入ってくるお金(キャッシュイン)の間に、致命的なタイムラグが生まれてしまったのです。

これが、黒字倒産の正体です。
帳簿上の利益は、あくまで約束手形のようなもの。
売上は幻想、キャッシュは現実。
手元にある現金こそが、会社の命を繋ぐ唯一の「血液」なのだと、この時、胃が焼け付くような感覚と共に思い知らされました。

孤独という名の病。誰にも言えなかった「助けて」の一言

プライドが邪魔をした銀行交渉

資金がショートする。
その恐怖が、じわじわと僕の心と体を蝕んでいきました。

メインバンクに追加融資を申し込みに行きましたが、担当者の表情は曇るばかり。
「売上は立っているんですが、入金が少し先でして…」
僕のしどろもどろの説明に、返ってきたのは非情な言葉でした。
「坂上さん、決算書上は黒字でも、キャッシュフローがこれでは…」

結局、融資は断られました。
「社長は弱音を吐いてはいけない」というくだらないプライドが邪魔をして、事態がここまで悪化する前に相談できなかったことが、全ての敗因です。

最後の望みを絶たれた夜

銀行がダメなら、と次は親戚に頭を下げに行きました。
事業が順調だった頃、散々自慢話を聞かせていた叔父です。
しかし、金の切れ目が縁の切れ目、とはよく言ったもの。
「お前も大変だな」と同情はしてくれても、誰も財布の紐を緩めてはくれませんでした。

そして、冒頭の夜を迎えます。
通帳残高、8万円。
オフィスの冷たい床の上で、会社の登記簿を握りしめながら、ただただ時間が過ぎるのを待つしかありませんでした。
「ここで終わりか…」
父の悲しそうな顔が、脳裏に焼き付いて離れませんでした。

崖の淵で掴んだ一本の命綱「ファクタリング」

税理士の言葉「最後の手段ですが…」

夜が明けた頃、震える手で顧問税理士に電話をかけ、全てを打ち明けました。
もう、プライドなんてありませんでした。
僕の嗚咽混じりの話を聞き終えた彼が、静かにこう言ったのです。

「坂上さん、最後の手段ですが…ファクタリングという方法があります」

ファクタリング?
聞いたことのない言葉でした。
それは、まだ入金されていない「売掛金」を専門の会社に買い取ってもらい、早期に現金化する金融サービスだというのです。

融資ではないので、僕の会社の経営状況や赤字かどうかは、あまり関係ない。
重要なのは、売掛金を支払ってくれる取引先の信用力。
まさに、僕のような状況のためにあるサービスでした。

「売掛金」は未来を救う時限カプセルだった

藁にもすがる思いでファクタリング会社に連絡すると、担当者は僕の話を親身に聞いてくれました。
そして、信じられないことに、申し込みをしたその日の夕方には、500万円の売掛金が現金となって僕の口座に振り込まれたのです。

手数料は決して安くはありませんでした。
でも、そんなことはどうでもよかった。
この500万円は、ただのお金じゃありません。
それは、従業員の生活を守り、会社の命を繋ぐための、まさに「希望」そのものでした。

僕は、売掛金のことを「未来のあなたを救うための、時限式の現金カプセル」と呼んでいます。
あの時、未来の自分に宛てて発送していた現金カプセルが、過去の僕を救ってくれたのです。

二度と地獄を見ないために。僕が骨の髄まで刻んだ「会社の血液」を守るルール

あの地獄からV字回復を果たした今、僕は二度と過ちを繰り返さないために、3つのルールを自分に課しています。
これは、僕が3,200万円の負債と引き換えに手に入れた、血の通った経営哲学です。

ルール1:売上より「入金予定日」をカレンダーに書き込む

売上目標を壁に貼るのは、もうやめました。
代わりに、全ての取引の「入金予定日」と「支払予定日」を、巨大なカレンダーに書き込んでいます。
会社の血液が、いつ、どれだけ入ってきて、いつ、どれだけ出ていくのか。
その流れを、息をするのと同じくらい当たり前に把握する。
これが全ての基本です。

ルール2:資金繰り表は、未来の自分への手紙

以前は見るのも嫌だった資金繰り表を、今は毎日つけています。
これは、未来の自分への手紙です。
「3ヶ月後、資金が厳しくなるぞ」
「半年後、大きな支払いがあるから備えておけ」
過去のデータが、未来の自分に危険を知らせてくれる。
これほど心強い味方はいません。

ルール3:「助けて」と言える勇気を持つ

そして、これが最も重要かもしれません。
一人で抱え込まないこと。
社長だって、人間です。
怖いものは怖いし、辛いときは辛い。
「助けて」と声を上げることは、決して恥ではありません。
むしろ、会社と従業員を守るための、経営者の最も重要な仕事の一つだと、僕は断言します。

あなたは、決して一人じゃない

この記事を、最後まで読んでくださって本当にありがとうございます。

もし、あなたが今、暗い部屋でたった一人、パソコンの光だけを頼りにこの文章を読んでいるのなら、伝えたいことがあります。

諦めるのは、全てのカードを切り尽くしてからでも遅くありません。

あなたの会社は、まだ死んでいない。
僕がそうだったように、あなたの机の引き出しにも、未来のあなたを救う「時限式の現金カプセル」、つまり売掛金が眠っているはずです。

  • 黒字倒産は、売上と現金の流れのズレで起こる。
  • 手元の現金(キャッシュ)こそが、会社の血液である。
  • プライドを捨て、「助けて」と声を上げる勇気が未来を拓く。
  • ファクタリングは、崖っぷちの会社を救う「命綱」になり得る。

さあ、絶望の淵から顔を上げて、まずはその一歩を踏出してみませんか。
机の中にある請求書を、全部出してみてください。
それが、あなたの会社に眠る「埋蔵金」です。

そして、忘れないでください。
あなたは、決して一人ではありません。